「家族破壊に終止符を (2)」祖国と青年2021.5

家庭破壊に終止符を!
(2)家族再生に取り組むアメリカの研究に学ぼう

祖国と青年 3年5月号 52p~
メリーランド州立大学講師 エドワーズ博美

5.離婚で幸せになれるのか

 前回みてきたように、第2次大戦直後の家族破壊は、戦後様々な法改正をした社会主義者に始まり、「男女共同参画」を提唱したフェミニスト、「連れ去り」に携わった左翼弁護士、そして国連で暗躍する左翼活動家たちにしてやられたのだ。彼らの活動は組織的で労力を厭わず、耳あたりの良い美辞麗句で覆われ、巧みに行政や司法を操っている。
 それに対してサイレントマジョリティーと言われる一般大衆はあまりにも無防備で長い間見て見ぬふりをしてきた。今の日本に戦前の家族の強い絆と、世界から絶賛された子供の天国が存在すると胸を張って言える人が一体何人いるだろうか。
 それでは、こうした家族破壊に対抗するために何ができるのか、家族破壊は決して時代の流れではなく、偏向思想の左翼たちが長年関わってきていることを認識することから始めるべきだ。我々はしてやられたのだ。「慰安婦は性奴隷である」と国連人権委員に認めさせた左翼弁護士は、20年以上も足繁く国連に通って活動してきたと聞く。彼らのそうした労力に対抗するだけの労力を惜しまない覚悟があるのかが問われている。まずは、彼らが提唱する数々の詭弁を打破することから始めよう。
 1980年代から急速に離婚が進み、家族が崩壊してきたアメリカでは、この崩壊を食い止めようと家族再生に取り組む研究者達により種々の研究がなされた。彼らの研究結果に耳を傾けることで、左翼の詭弁を打破するための手助けになるのではないかという思いから、そうした研究結果のいくつかを紹介する。

 ニューヨーク氏の一角に家族再生に取り組む「アメリカ価値研究所」というNPOがある。この研究所から発行された研究に「離婚で幸せになれるのか」(※4)という興味深い研究結果がある。不幸せな結婚生活を続けるより離婚した方が幸せになれる、と多くの人は思っているが現実はどうなのか。それを調べた結果、次のような興味深い統計が出た。

〇不幸せな結婚生活にかかわらず離婚や別居をしなかった夫婦が5年後に幸せになった率・・・64%

〇不幸せな結婚生活に終止符を打って離婚または別居して5年後に幸せな再婚をした率・・・19%

〇非常に不幸な結婚生活でありながら離婚しなかった夫婦が5年後に幸せになった率・・・78%

 男女共同参画基本法が制定されてから「家庭の多様性」という概念が家庭科教科書でも子供達に教えられ、いとも簡単に離婚してしまう風潮が日本に蔓延してしまった。しかし、離婚は問題解決にはならず、離婚したからといってその後の生活が幸せなものではないことを、この研究は如実に示している。
 どんな結婚生活にも山もあれば谷もある。何が離婚を思いとどまらせてその後の結婚生活に幸せをもたらしたのだろうか。多くの人が挙げているのが「結婚は続けるものだ」という倫理観だ。「結婚生活が以前より幸せなものになったのは、自分たちが問題を解決したからではなく、根気強く結婚生活を続けたからだ」という。「結婚の永続性」を信じるからこそ結婚が長続きし幸せになれる。安易に離婚に走る昨今の風潮に警鐘を鳴らしたい。
 前述の調査は離婚した、もしくは離婚を思いとどまった当事者に関するものだが、離婚家庭の子供を対象にした研究もある。「離婚の子供への影響」に関して世界的に有名なジュディス・ワラースタイン博士は1971年から25年間、離婚家庭の子供131人を追跡調査し、離婚が子供の人生に与える影響を「離婚の負の遺産」(※5)と題する本に纏めている。この本の中で筆者は次のように指摘している。

「離婚家庭の子供達は大人になって同棲はしても、40%が一度も結婚しない。たとえ結婚しても、結婚生活における問題解決方法を見ないで育っているのですぐ離婚してしまう。」

「離婚家庭の子供達にとっては家庭とは団らんを意味するものではなく、失ったものの象徴でしかなく、先祖から子孫へと繋がる継続性の意識がない。それゆえ、子供を持ちたいとも思わない」等々。

 多くの人が離婚の子供への悪影響は離婚当初のみで、何年かして生活が落ち着くと子供は親の離婚を乗り越えて普通の生活に戻ると思っているが、そうではない。親の離婚は子供たちが大人になった後まで尾を引き、子供達の人生を大きく狂わせてしまう。離婚家庭の子供は大人になっても、概して子供を欲しがらないので少子化をも加速させる。離婚は親にとっても子供達にとっても、さらには社会にとっても負の遺産以外何物でも無い。

6.なぜ結婚は重要か

 さらに、「家族の多様性」という何でもありの家族が子供達にとって本当に幸せな家族と言えるのか。これに答えを投じる研究もおこなわれた。「家族形態と子供の幸福度」(※6)と題する調査で、スーザン・ブラウン博士は子供が育つ家族形態を7つに分類してそれぞれの家族形態における子供の行動面、精神面、学業成績などから子供達の幸福度を測っている。
 7つの家族形態は、「両親とも実の親で婚姻関係」、「両親とも実の親で同棲関係」、「片親だけで実の親で婚姻関係」、「片親だけで実の親で同棲関係」、「母子家庭」、「父子家庭」、「親以外の家庭」だ。
 調査の結果、一般的に基本家族と言われる、両親とも実の親で婚姻関係にある家庭で育った子供に問題行動が一番少なく、学業成績は一番良かった。興味深かったのは、たとえ両親とも実の親でも、両親が同棲関係にある家庭の子供達は母子家庭に酷似しているということだ。スーザン博士は、親の事実婚が子供の健全な成長にとって理想的とは言えないのは、親が抱く将来に対する不安が親のストレス要因になって子供に悪影響を与えるからだ、と指摘している。「一生添い遂げる」という結婚の誓いは夫婦間の絆を深め、子供にも良い影響を与える。「家族の多様性」がいかに詭弁であるかの証拠だ。
 前述したアメリカ価値研究所は「なぜ結婚は重要か―社会科学による30の結論」(※7)という研究調査もしている。調査結果の中から何点化を紹介する。

「婚姻夫婦は平均的に独身者や同棲者よりも多くの財産を築く」
「結婚している実の両親と暮らす子供は比較的健康で心の病を抱える確率が低い」
「結婚は怪我や病気の発生率の低さと関連がある。」
「既婚の母親は未婚や同棲中の母親よりもうつ病になりにくい。」
「非婚家庭の子供は児童虐待を受ける危険性が高い」等々。

 子供の貧困問題にしろ、児童虐待にしろ、社会問題の多くは離婚や同棲といった「家族の多様化」の結果であると言える。前述の調査の著者も言う。

「結婚することが普通であると見做される地域は、離婚、婚外出産、同棲者などが多い地域よりも、子供にとっても女性や男性にとっても良い影響をもたらす。」
「結婚は決して社会問題の全てを解決する万能薬ではないが、社会的善である。」

 最後にコロナウィルスが猛威を振るっていた昨年の5月にアメリカから届いた興味深い研究を紹介する。「婚姻家庭が多い地域ではコロナ感染者が少ない」(※8)と題された調査で次のような指摘をしている。
「2700に及ぶ地域のデータを分析した結果、3月から4月の間における感染者数と感染者の増加には社会的資本(家族のつながり、社会的支援、地域の健全性)が密接に関係していた。」
「特に婚姻家庭の占める割合と感染者には強い関連性があり、婚姻率が1%増加すると感染者数は4%減少する。」
「アメリカ全土を通して結婚の強固さとウィルス感染を弱める能力には密接な関連性がある。」
 さらに調査ではこの関連性の理由として、婚姻家庭が概して一戸建てに住み、それゆえ小さいアパート住まいの人よりウィルスに晒されることが少ないこと、さらに婚姻家族の人の収入はそうでない人より多いことから、ソーシャル・ディスタンスが保たれ医療も受けやすいことを挙げている。
 前述の「なぜ結婚が重要なのか」の著者が指摘した通り、婚姻家族は財産を築きやすく、病気の発生率が少ないことの大きな裏付けと言える。
 結婚にはメリットがあり、離婚や同棲では当事者はおろか子供達も決して幸せになれないということを肝に銘ずる必要がある。基本家族を守らないと健全な社会は望めないのだ。

7.おわりに

 「家族の多様性」をまるで伝家の宝刀のようにして、フェミニストたちは非常な勢いで家族を破壊してきた。しかし、そろそろ彼らの詭弁や甘言に惑わされるのは止めよう。
 世の中や自然界は「多様な」人種や生物、植物で満ちあふれている。そうした多様性を尊重すべきはいうまでもない。だからと言って、生き方や価値観にまで多様性を求めるのは間違っている。「自分は働きたくないから政府が養うべきだ」という若者を税金で養う必要など毛頭ない。生き方には当然、規範が求められる。家族も一緒だ。「家族の多様性」を認めた先にあるのは社会の混乱と疲弊しかない。アメリカの調査結果が如実にそれを物語っている。
 「男女共同参画」が日本を席巻して以来、家庭科の教科書は「家族の多様性」が恰も素晴らしいことであるかのように子供達に教えてきた。あまりにも無責任な教育であるとしか言い様がない。文部省には猛省をしてもらいたい。まず子供達に教えるべきは結婚の素晴らしさであり、基本家族が人々に幸せをもたらし、ひいては社会に貢献しているということを教えることだ。
 何も難しいことではない。時計の針を50年前に遡らせればいいだけのことだ。50年前の日本では同棲や離婚は珍しく、年頃の子供がいる家には近所の世話好きがお見合い写真をもってきて結婚を勧めた。フェミニストや左翼たちに感化される前の日本では、大人は誰もがこうした生き方が人々の幸せに繋がると分かっていた。この強い家族制度のお陰で日本人の絆と美徳は保たれてきた。
 日本にはまだまだ素晴らしい家族制度が残っている。日本の家族制度の素晴らしさを子供達に教えようではないか。
 前回紹介したテキサス親父日本事務局の藤木俊一氏は自費で国連に出向いて孤軍奮闘している。彼はこうした活動の理由を「国連で左翼達に好き勝手をさせないため」と言っている。彼の提唱で「連れ去り」問題も人権委員会にNGOレポートとして提出された。10年以上前までは人権委員会に対するNGOレポートと言えば左翼一色だったが、最近では保守側からのレポートも少しずつ増えてきている。
 家族破壊の波は一人一人ができることから始めないと食い止めることはできない。未来を背負う子供達の幸せのためにも一丸となって家族破壊に終止符を打とう!

※4:Linda J. Waite 他, “Does Divorce Make People Happy?” (Institute for American Values, 2002)

※5:Judith S. Wallerstein, Julia M. Lewis & Sandra Blakeslee, “The Unexpected Legacy of Divorce,” (Hyperion, 2000)

※6:Susan L. Brown, “Family Structure and Child Well-Being,” (Journal of Marriage and Family 66, May 2004)

※7:Bradford Wilcox他, “Why Marriage Matters; Thirty Conclusion from the Social Sciences, Third Edition,” (Institute for American Values, 2011)

※8:Christos Makridis, “More Marriage, Less COVID: How Communities with More Marriage Are Weathering the Storm” (Institute for Family Studies, May 11, 2020)